このプロジェクトは、DECIGO pathfinderにおける重力場測定のための加速度計用レーザーセンサーの感度評価を行う事が目的である.これにより,現在のレーザーセンサーのモデルの問題点を洗い出し,今後の性能向上を目指す.
DECIGO pathfinder(DPF)とは,現在打ち上げが計画が進められている宇宙観重力波望遠鏡DECIGO*1の技術試験衛星である.
DPFの目的には重力波測定のための技術開発,実際の重力波観測のほかに,地球の微細な重力場構造測定もあり,本実験では重力場構造の測定の際に用いるレーザーセンサーの感度評価を行う.
DPFで可能な重力場測定方法としては,以下の2つが考えられている.
重力場構造は,DPFが受けた重力によってどのように運動するかを割り出すことによって観測される.衛星の運動はGPSによって測定されるが,その際,衛星がどの程度の重力以外の外乱を受けているかをマスモジュールと衛星の相対位置の変化を見ることによって割り出し,衛星にかかる重力を計算する.
以下に概念図を示す.
マスジュールは衛星内に非接触状態でおかれる.衛星軌道上で,衛星もマスモジュールも地球からの 重力を受けるが,それ以外にも衛星は太陽風などといった重力以外の外乱の影響も受ける.このとき衛星とマスモジュールの相対位置が変化してしまうため,2つが相対的に静止するようにマスが衛星に追随するような制御をかける.すると,この制御をかけた力の大きさは衛星の受けた外乱の大きさと等しくなる.この事と,高精度GPS による衛星の位置情報を用いると,地球の持っている微細な重力場構造を割り出す事ができる.
今回の実験で感度を測定するレーザーセンサーは,マスモジュールを衛生に追随させる制御をする際に,マスモジュールと衛星の相対位置の変化を測定するために用いられるものである.
衛星の速度と、マスと衛星の相対速度からジオイド高を算出する方法:
これは,Fabry-Perot干渉計を重力勾配計として用いる方法である.
重力場ポテンシャルが完全な球でない場合,Fabry-Perot干渉計の2つの鏡にそれぞれ異なる重力場がかかる.この時2つの鏡には異なる加速度が生じるため,これが腕の長さの変位となって信号に表れる.
基本的には重力波観測と同じセットアップで観測する事ができるが,地球重力場の影響は0.1Hz以下の低周波に効いてくる.DPFの目標感度において0.1Hz以下で重力波の測定感度をリミットしているのはこの重力場である.(重力波にとってはノイズである重力場が今回の測定対象となる.)
現在作成されているレーザーセンサーモジュールの感度評価を行う.
レーザーセンサーはマイケルソン干渉計型のもので,モジュール内でレーザー光を放射し,モジュール内のコーナーキューブで反射した光と,外部(マスモジュール側)のコーナーキューブで反射した光が干渉する仕組みになっている.使用しているレーザー波長は1550nmである.
このセンサーモジュールと外部反射用のコーナーキューブを地面振動が効かないように台に固定し,静止時のノイズを測定した.
また,重力場を球面調和関数で展開したときに,上の2つの方法それぞれを用いる事でどれだけの感度が期待されるかを計算した.計算方法は