計画研究 シ : 精密量子計測の重力計測への応用



       [研究組織] 

   氏名 所属 ・職 専門 役割分担
代表 中川 賢一 電気通信大学 ・ レーザー新世代
研究センター ・ 助教授
量子エレクトロニクス 原子干渉計による重力加速度計の開発
分担 武者 満 電気通信大学 ・ レーザー新世代
研究センター ・ 助手
量子エレクトロニクス 原子干渉計用レーザーの開発と
レーザー干渉計による重力計測




   [研究の概要と目的]


 レーザー干渉計を用いた重力波検出器の研究開発は様々な極限的な計測制御技術の発展や従来の量子限界を 超える新しい物理原理の発展などに大きく寄与した。 このような精密計測方法の一つとして光の代わりに原 子の物質波を用いた原子干渉計が原理的に高い感度および精度が得られるものとして注目されており、この重力加速度測定やジャイロスコープ、基礎物理定数の測定などへの応用が進められている。 そこで本計画研 究ではこの原子干渉計による高精度計測技術を確立し、 これを用いた高精度な重力加速度計の開発を行うことを目的とする。

 重力加速度 g の精密測定は地球物理学、資源探査および地震予知などにおいて重要であるが、従来の自由落下する鏡を用いたレーザー干渉計による重力加速度測定法に対して本研究では自由落下する原子を用いた原子干渉計を用いるもので、従来の方法に比べて系統誤差を非常に小さくすることが可能になり、非常に高精度な測定が期待される。 また測定感度および精度が向上さされればこれを用いて重い質量 源と原子の間の万有引力の測定も可能となり万有引力定数 G の精密測定に応用することができる。 従来のねじれ秤を用いた G の測定に比べて系統誤差を非常に小さくすることができ、高い精度で G を決定することが期待される。 このGの測定に関しては最近レーザー干渉計を用いた方法も提案されており、これに対しても 従来のレーザー干渉計型重力波検出器の開発によって得られた高精度干渉計測技術および高精度な防振技術 を応用することにより高精度な G の測定が期待される。

 このため本研究においては原子干渉計と並行してこ のレーザー干渉計を用いた G の測定も行う。 原子干渉計とレーザー干渉計の両方法による G 測定の比較は測 定精度の相互検証として重要であるだけでなくミクロで量子的な系である原子とマクロで古典的な物体である鏡の間における重力の差異の有無の検証ともなり重要である。





  [年次計画]


平成 14 年度

1. レーザー冷却 Rb 原子を用いた原子干渉計の開発。レーザー冷却法を用いて Rb 原子を数マイクロケルビンまで冷却し、 2台の光位相同期された半導体レーザーの光を原子のビームスプリッターおよびミラーとして 用いた原子干渉計を開発する。

2. 万有引力測定のためのレーザー干渉計の開発。 LD 励起 Nd:YAG レーザーを光源としてワイヤーで吊 った鏡を用いた高フィネス光共振器を用いたレーザー 干渉計を開発する。



平成 15 年度

1. 原子干渉計を用いた重力加速度計の開発 原子干渉計によって自由落下原子を用いて重力加速度 g の測定を行い、その測定感度および精度向上を行う。相互作用時間を長くするため、 原子を打ち上げる原子泉法も行い、測定分解能 10-10 、精度 10-9 台を目指す。

2. レーザー干渉計による万有引力定数 G の測定 レーザー干渉計において質量源を光共振器の一方の鏡の近くに配置して質量源と鏡の間の万有引力による変位を測定し、 その感度および精度の評価を行い性能向上を行う。 TAMA、 LISM のデータ処理とイベント探索。 相関解析。



平成 16 年度

1. 原子干渉計を用いた万有引力の測定。 原子干渉計を用いた重力加速度計を用いて原子と質量源との間の万有引力による g のわずかな変位を測定し てその大きさを測定する。 測定感度および精度を向上するため、 同様の 2 台の原子干渉計を用いて両者の加 速度差より万有引力を測定する新たな装置を開発する。

2. レーザー干渉計法による万有引力測定の性能向上先のレーザー干渉計による万有引力定数の測定における系統誤差を評価し、 これを低減するための改良を行 う。



平成 17 年度

原子干渉計およびレーザー干渉計による万有引力定数の精密測定。両方法において万有引力定数 G の測定を 行い、両者の感度、精度および G の値の比較を行い、両方法における系統誤差および感度を制限している要 因を追求し、これに基づいて装置の改良を行い G を精度 10-4で決定することを目標とする。