計画研究サ : 地球物理への応用
[研究組織]
氏名 所属 ・職 専門 役割分担 代表 竹本 修三 京都大学 ・ 大学院理学研究科 ・教授 固体地球物理学 レーザー干渉計による
地球内部ダイナミクスの研究
分担 赤松 純平 京都大学 ・ 防災研究所 ・ 助教授 応用地震学 高性能地震計の開発
[研究の概要と目的]
重力波検出器の極限的な防振技術を応用した、新しい高性能地震計の開発と計測制御技術の研究を推進する。 地震動の観測を行うためには地球に対する不動点を設定する必要がある。現在用いられている地震計のほとんどは、 周期を限定した振子を不動点と考え、振子に取り付けたコイルが永久磁石のなかを動くときに生ずる電流をシグナルとして取り出す方式の、いわゆる動コイル型地震計である。 一方、 重力波検出のためには地面 振動はノイズ源であり、その影響を避けるために重力波検出器のミラー懸架部分には極限的な防振対策が施 されている。 このような対策を講じた重力波検出器のミラー部分を不動点と見なせるなら、 ミラーとその下 の地面との相対変位を計測することにより地震波動を含む地面振動が観測できる。
そこで、本研究ではまず第一に、重力波検出器の極限的な防振技術を応用した新しいタイプの高性能地震計の開発を目指す。 この開 発過程で明らかになった改良点を防振系グループとも協力しながら重力波検出器用の防振対策にフィードバッ クすることにより、重力波検出器の精度向上に貢献する。次に、重力波検出用のレーザー干渉計は、極めて微小な空間の歪みを検出するために、 限られた周波数帯 に極限的な技術を集約した高性能観測システムであるが、この技術を地球物理学の分野に応用し、 レーザー干渉計方式のボアホール型傾斜計の開発などが試みられている。
本研究では、このようなレーザー干渉計技 術の地球物理学的応用をさらに発展させ、地球の自由振動から地球潮汐の帯域 (10-3 ~ 10-5 Hz) において、10-13 オーダーの地殻歪を検出できる高性能レーザー伸縮計システムを開発する。 この感度は、微小な重力 の時間的変化を観測する目的で開発された超伝導重力計の分解能に匹敵し、 地球潮汐の日周潮帯に現れる流 体核共鳴効果のほか、コア・モードやコア ・アンダートーンなどのまだ解明されていない地球深部ダイナミ クスを反映するシグナルの検出が期待できる。 さらに、将来、新たな重力波源として、10-3 ~ 10-5 Hz のシグナルを対象とする場合に、この帯域で地球内部に起因するノイズ ・レベルの推定に関して基礎的なデータを提供できる。
[年次計画]
平成 14 年度
1. 重力波検出器用防振装置による地震波動の減衰効果の研究。
地震の際の波動が重力波検出器用防振装置によりどの程度減衰するかをマグニチ ュード及び震央距離の異なるさまざまな地震について詳細に調査研究する。
2. レーザー干渉計を用いた高性能地殻歪計システムの開発。
20 m のスパンで 10-13 オーダーの地殻歪分解能を有するレーザー干渉計システムを開発する。
平成 15 年度
1. 重力波検出器用防振装置を基礎とした新しい地震計の開発。 重力波検出器用防振装置を基礎とし、 1 ~ 103 Hz の周波数範囲において 80 dB のダイナミックレンジを有する高性能地震計を開発する。
2. レーザー干渉計を用いた高性能地殻歪計システムによる地球内部ダイナミクスの研究。 レーザー干渉計を用いた高性能地殻歪計システムを地下観測構内に設置し、自由振動から地球潮汐の帯域において 10-13 オーダーの分解能の地殻歪の精密観測に着手し、データを蓄積する。
平成 16 年度
1. 重力波検出器用防振装置を基礎とした地震計と従来型地震計との同時比較観測。 新しい地震計と従来型地震計との同時比較観測を行い、周波数特性を明らかにする。
2. レーザー干渉計を用いた高性能地殻歪計システムによる地球内部ダイナミクスの研究。 レーザー干渉計を用いた高性能地殻歪計システムによって得られた観測データから、 流体核共鳴効果やコア・モード、 コア・アンダートーンなどの地球深部ダイナミクスに起因する微小な歪を検出する。 また、サイレント・アースクエイクの研究を行う。
平成 17 年度
本研究で開発された高性能地震計と地殻歪計を重力波検出器の観測サイトに設置し、 重力波検出に及ぼす地面振動の影響を同時モニターする。