計画研究 オ : 低温レーザー干渉計プロトタイプ



       [研究組織] 

  氏名 所属 ・職 専門 役割分担
代表 大橋 正健 東京大学 ・ 宇宙線研究所 ・ 助教授 重力波宇宙物理学 研究統括 ・ 推進
分担 三代木 伸二 東京大学 ・ 宇宙線研究所 ・ 助手 宇宙物理学 低温レーザー干渉計の設計
分担 辰巳 大輔 国立天文台 ・ 位置力学 ・ 助手 重力波天文学 レーザー干渉計の調整 ・運転




   [研究の概要と目的]


  低温ミラーを組み込んだレーザー干渉計の優位性を実証することを目的とした基線長 100mの低温レーザー干渉計を建設する。これは、先進的な大型重力波望遠鏡 LCGT実現への着実な一歩である。 既にLCGTの建設候補地である神岡鉱山内には、 20mレーザー干渉計が国立天文台三鷹キャンパス (TAMAサイト) から移転されている。  
 
  このレーザー干渉計は、重点領域研究「重力波天文学」で建設したファブリーペロー方式のプロトタイプで、直接干渉・独立懸架型モードクリーナー・リサイクリングなど、様々な技術開発を行なってきた拠点である。既に国立天文台設置時のスペクトル感度を再現し、長時間観測を繰り返す段階に入っている。 安定性という意味では、 無人でも50時間以上におよぶ連続ロ ックを実現しており、 大型低温重力波望遠鏡 LCGT のキーワードの一つである「地下サイト」 の抜群の安定性を証明した。 これは地面振動が小さいことだけでなく、 温度などの環境の安定性も大きく関与している。 この好環境を最大限に活用し、低温鏡をはじめとする他の計画研究で開発される要素技術を結集するプロトタイプへと再構築する。 それに加え、 計画初年度にはTAMA300 との同時観測データを取得する。    

  重力波検出器の性能は、そのスペクトル感度と安定性で決まる。 前者は一般に使われている雑音のパワースペクトルを指し、後者は重力波信号以外の雑音成分のガウシアン性を意味する。この2つから重力波検出の精度が求められるのであり、重力波検出においてどちらも重要な指標である。同時観測データに物理的な意味を持たせるためには、 2台の性能をある程度一致させる必要があるが、 地面振動の点で有利な神岡地下サイトに設置された 20 m レーザー干渉計ではそれが可能である。 TAMA300は300 Hz において最高感度を出すように設計されているので、 防振を強化することにより低周波域 (100 Hz 近辺) で同等の感度を出す。この2台のコインシデンス観測により、 現実のデータからの知見を得る。





   [年次計画]


平成 14 年度

防振系の強化により低周波域の感度を向上させる。 また、無人のままで長時間のデータ取得ができるように、自動ロ ック機構を組み込み、リモートアクセスに対応したデータ収集装置を設置する。 これらの準備のもとで、TAMA300 との同時観測を行い、相関解析用データを蓄積する。


平成 15 年度

低温プロトタイプへの改造の準備と光学系や懸架系の設計を行う。低温ミラー用クライオスタットの製作 ・ 設置をはじめとした、低温レーザー干渉計の環境整備を行う。


平成 16 年度

サファイアミラーやその懸架系を組み込んで、20mレーザー干渉計を再構築する。 感度を出すための、初期的な不具合を点検し、もしあれば修正する。


平成 17 年度

光学および機械系に不具合がないとわかった時点で、制御回路を低雑音のものに交換し、 低周波域で低温ミラーの特性を発揮できる状態にする。 以上の準備の後に、低温プロトタイプを繰り返し運転 ・ 調整し、最終的には観測データを取得する。