計画研究キ : 高性能防振システムの開発



       [研究組織] 

  氏名 所属 ・職 専門 役割分担
代表 坪野 公夫 東京大学 ・ 大学院理学系研究科 ・ 教授 実験相対論 デザイン、 総括
分担 安東 正樹 東京大学 ・ 大学院理学系研究科 ・ 助手 実験相対論 防振特性測定




   [研究の概要と目的]


 TAMA300 レーザー干渉計重力波検出器は、世界に先駆けて本格的な重力波観測が可能となった。 現在、 TAMA の低周波における感度を制限しているのは地面振動であるが、 今後、 高性能な低周波防振装置を導入することにより、 低周波の感度を飛躍的に向上させることが可能である。
 
 そこで本計画では、低周波防振装置 SAS(Seismic Attenuation System) の基礎技術開発を目的とした研究をおこなう。 具体的には、 Caltech-東大-国立天文台 の 3 グループの共同で SAS を開発 ・ 試作し、 それを東大の 3 m プロトタイプレーザー干渉計に組み込み防振 特性等の性能評価を行う。 そこで得られた結果をもとに、 TAMA への SAS 導入のための技術的検討を行う。 TAMA の低周波領域の雑音レベルが下がることで、 連星合体に伴う重力波に対する検出効率の向上が期待できる。 また、 次期計画の km クラスレーザー干渉計のための高性能防振技術を確立するという目的もあわせ もつ。 SAS はレーザー干渉計重力波検出器のための低周波防振装置である。

 現在、 Caltech-東大-国立天文台の 3 研究機関の協同で開発研究が行われている。 1 組の SAS は、 1 段の倒立振子 (IP) と複数段の特殊な形状の板 ばね (GASF) からできている。 SAS でミラーとミラー支持装置を懸架することにより、 6 自由度の防振が可能 となる。
 
 すでに、 Caltech において試作品を製作し、 単体での基礎データの測定をおこなっているが、 これま での防振装置をはるかにしのぐ超高性能な防振特性を得ている。 例えば、 GASF 1 段で 10 Hz において 55 dB という高い防振比が実測されている。 本計画では SAS を 2 組製作し、 それを東大本郷にある 3 m プロトタイ プレーザー干渉計に組み込み、 実際のレーザー干渉計の中での動作を調べる。 低周波防振により雑音出力が 低減することが期待されるが、 その他にも、 残留振動が小さくなるために干渉計のロ ッ クが容易になる等の 効果が予想される。 実際に干渉計の防振特性が SAS によって改善されることを確認することは、 TAMA の今 後の高感度化のための重要なステ ッ プである。

  本計画においては、 防振系自体のもつ各振動モードのダンピング、 および動作点設定のための位置制御が主な技術的課題となる。 本計画が始まる前に、 Caltech においてSASの基礎技術開発を進める。 空気中で各段の防振特性を測定する。また、 GASF のシミュレーションを行い、 デザインの最適化を検討する。




  [年次計画]


平成 14 年度

東大本郷の 3 m プロトタイプレーザー干渉計の中に SAS を組み込む。 SAS 収容のため、 3 m 真空槽の一部手直しが必要である。 2 つのミラーをそれぞれ SAS で懸架し、 3 m 基線長のファブリー ・ ペロー光共振器をつ くる。 光共振器のロ ッ ク時の動作特性をテストする。 また、 光共振器の干渉出力を測定し、 共振器の防振特 性および位置安定性を評価する。



平成 15 年度

東大での実験結果をもとに、TAMA300 に SAS を導入した場合の技術的評価をおこなう。 また、 TAMA干渉計にあわせたSAS デザインの変更や、 新しい制御系の設計をおこなう。



平成 16 年度

国立天文台の TAMA300 に 4 台の SAS を導入し、 低周波での防振性能の改善を図る。 SAS 設置後に、干渉計の防振特性や安定性の評価をおこなう。