計画研究カ : 帯域可変型干渉計による重力波検出器の高感度化
[研究組織]
氏名 所属 ・職 専門 役割分担 代表 川村 静児 国立天文台・置天文・天体力学研究系・助教授 重力波物理学 設計 ・ 開発
[研究の概要と目的]
重力波検出器の帯域を変化させ結果として装置の感度を高めることを可能にする帯域可変型干渉計の開発を 行なう。 将来の大型重力波アンテナへの組み込みを目指して、 実際の重力波検出器により近い形で詳細な研 究を行なう。
重力波検出器の基本的雑音のひとつであるショットノイズを抑えるための有力な方法として注目を浴びてい るのが、 帯域可変型干渉計の導入である。 これは従来の干渉計の光学構成 (リサイクルド ・ フ ァ ブリペロー ・ マイケルソン干渉計) に新しい光学系 (シグナル ・ エクストラクシ ョ ン ・ ミラーあるいはシグナル ・ リサイク リング ・ ミラー) を加えることで干渉計の重力波に対する周波数応答を自在にコントロールし、 結果として重 力波検出にと っ て最も都合のよい周波数帯で装置のシ ョッ トノイズを引き下げ感度の改善をもたらすもので ある。
帯域可変型干渉計は、 現在世界各地で将来の重力波検出器に組み込まれることを前提に精力的にその 研究が行なわれており、 すでにその基本的な振る舞いはテーブルト ッ プ実験において確認されている。 こう いった状況を踏まえ、 本研究では帯域可変型干渉計の詳細な研究を理論 ・ 実験両面で行なう。 特に干渉計の 光路長 ・ アラインメントの制御方法や各種光学パラメタの最適化を行ない、 この方式に特有な雑音のメカニ ズムの解明やその他の問題点を徹底的に洗い出す。
また真空中でつり下げられた鏡を用いるなど実際の重力 波検出器により近い形で実験を行なうことにより、 そこで得られた知見が将来にそのままの形で役立つこと が可能となる。 本研究の目的は将来大型重力波アンテナにこの方式を組み込むための完全なる開発を行なう ことである。
[年次計画]
平成 14 年度
帯域可変型干渉計の光路長 ・ アラインメントの制御方法や各種光学パラメタの最適化について理論的研究を行なう。 それと同時に実験に必要な真空装置、 光学部品、 機械部品などを製作 ・ 購入する。
平成 15 年度
帯域可変型干渉計を動作させるための制御系の設計を行ない、 必要な電子回路を製作する。 干渉計の基本的な振る舞いを再確認し理論との整合性をチ ェッ クする。
平成 16 年度
制御方法や各種光学パラメタを最適化するため、 いろいろな手法やパラメタの優劣を実験的に確かめ、 その中から最適なものを選び出す。
平成 17 年度
帯域可変型干渉計のパフ ォ ーマンスをさらに改善するためのいくつかの新しい試みを行ない、 それらが実用化できるものかどうかを判断し、 可能ならその技術のさらなる改善 ・ 洗練を行なう。