計画研究イ : 干渉計のデータ処理とイベント選別・相関解析



       [研究組織] 

  氏名 所属 ・職 専門 役割分担
代表 神田 展行 大阪市立大学・大学院理学研究科・教授 重力波物理学 計画 ・ 相関解析、 解析ソフト開発




   [研究の概要と目的]


 本計画研究では、レーザー干渉計重力波検出器の観測運転で得られたデータを用いて、 重力波イベントを探索するのが目的である。ここで用いるデータは同研究項目 A01 の2つの干渉計、TAMA300干渉計 (国立天文台、三鷹)と20m干渉計 (LISM、東大宇宙線研、神岡)のものである。本計画研究は、特に2台の干渉計を用いての相関解析を行なうことが重要な特色である。 これは国際的な競争の上でも数年内になされねばならない。また、同時観測の性質上、 重力波イベント選別の前におこなうデータ換算処理、運転情報などのマネジメント、 veto 解析といったデータ解析一般の要素も含まれる。

 レーザー干渉計重力波検出器は高感度であるが、重力波イベントは雑音中から選別し、 取り出さなくてはならない。期待できる重力波が小さいため、明らかに認識できるイベントは少ないと考えられている。 また直接観測は未だなされていないため、最初の重力波イベントはさまざまな傍証なしでは確信を得られない。 そこで我々は、2台の干渉計を使って相関解析を行なう。2つの検出器情報の相補的な情報により最終的にイベントが見付か った場合は信頼度を得ることができる。また、近傍銀河で重力波イベントが発生しなか った場合でも、偽イベント数を、1台の時にくらべて効率的に排除することができるため、 重力波の発生頻度について、信頼度の高い上限値を得ることができる。

 主たる重力波源は、アンドロメダ銀河までの範囲での2重中性子星合体、 II 型超新星爆発などがまずあげられる。 そのほかには、ダークマター候補の一つである MACHO の連星合体も、存在すれば十分に検出できる重力波の大きさになる。 その中で、 最初の重力波直接検出の対象として最も有力視されている2重中性子星合体のイベントでは、 重力波以外のチャンネルからはイベント時刻を特定できるような情報が得られることが期待されないのに比べ、 重力波の相関解析からは、 このような情報を得ることができる。このイベントに対する感度は、 TAMA300、 20 m 干渉計ともに我 々 の銀河系ないし最高でもアンドロメダ銀河程度以内までである。 したがって、我々の銀河内でのイベントの探索/上限値をもとめるのがまず第一の目的となるが、将来的に重力波検出器の国際ネットワークへ進むための実績と競争力を備えるためにも、 相関解析を 2005 年までにおこなう必要がある。

 また、光学観測、ガンマ線バースト、超新星観測などとの相関ももちろんチェックされねばならず、重力波イベント候補のデータベースの構築も視野にいれた、 組織的な解析環境をめざす。

 一方相関解析に進む前に、それぞれの検出器について、データの評価、単独でのイベント探索といった、 現在主に TAMA の研究において行なっている単独でのデータ処理が必要となる。 相関解析自体も、単純にイベント候補リストを比較する解析から、それぞれの信号の積を用いるとい った生データに近い解析までいくとおりかを考えている。重力波解析の手法自体も、 対象となる重力波源の種類を増やし、手法を多様化して、相補的な情報を得られるような研究展開が必要となる。






  [年次計画]


平成 14 年度

前半 : データ処理用ホスト計算機、データアーカイブシステムの構築。解析ソフトウエアの整備。
後半 : TAMAデータの処理。単独でのイベント探索。



平成 15 年度

TAMA、LISMのデータ処理とイベント探索。相関解析。



平成 16 年度

詳細なデータ解析。主として解析の系統誤差の再評価と手法改善による追い込み。ソフトウエア資産のライ
ブラリ化。イベントデータベースの整備。



平成 17 年度

TAMA、 LISM のデータ処理とイベント探索。
研究項目 A02:低温レーザー干渉計重力波検出器のための技術開発