- 重力波セッション : 一日目 (Friday 23 August)
Low-Frequency Gravitational-Wave Detectorsというサブセッションとして、主にLISA関係の話が続いた。いろいろな方面で本格的な研究開発が始められており、実験前の見積もりや実験計画、非常に基礎的な実験結果が出てきた段階、というのが全体としての印象。そのためか、実験結果としてはやや物足りない気もした。
SESSION 1 : Inertial Sensing and Drag-Free Spacecraft
- Use of drag-free spacecraft in the detection of low-frequency
gravitational raidation,
Y. Jafry, European Space Agency/ESTEC (Netherlands)
- LISAのDrag-freeのコンセプト、要求値と基本デザインを示し、問題点について議論。レファレンスマスが非常に弱いサスペンションで支持されているというモデルの方程式群を示し、様々な影響を議論していた。
- Disturbance reduction system for testing technology for drag-free operation,
G. Keiser, S. Buchman, Jet Propulsion Lab.
- Drag-freeのための高感度センサーの話。SMART-2での目標と、そのためのテストマス等の試作とテストについて話していた。ディスク状のAu-Ptやキューブ状のステンレステストマスを製作していた。
- Development of a micro-Newton thruster for a drag-free control
system,
R. Leach, Design_Net Engineering
- Drag freeのイントロ的な話と、実験モデルと制御シミュレーションの概要を話していた。長いワイヤー一本吊りの実験装置の絵を示していたが、これといった結果は無かった。制御はPIDと言っていたが、それで十分ということなのだろうか?
- Design and ground testing of position sensors for LISA drag-free control,
W. Weber, Univ. degli Studi di Trento (Italy)
- Drag-freeにもちいるセンサーの雑音源の見積もりをしていた。また、テストのためのtortion
pendulum実験の図を示していた。
- Electrostatic modeling for LISA,
D. N. Shaul, Imperial College of Science
- テストマスとその周りの静電型トランスデューサ・アクチュエータ間の磁場の計算。テストマスの支持法によって、角の切り欠きや非対称性な形状ができるが、その際の磁場の影響をANSYSを用いて、有限要素法で計算していた。また、それをもとに、テストマス支持の際のオフセットの精度の要求値を示していた。1Vの電位差があるとき、3-10umのオーダーが必要だそうだ。
- Charging of isolated proof-masses in satellite experiments such as LISA,
H. Araujo, Univ. de Coimbra (Portugal)の代理の人、T.J.Sumner (UK)
- テストマスが帯電した場合に生じる問題と、その概算値、UV dischargeの手法についての話。
SESSION 2: Interferometry
- Time-delay interferometry for LISA,
M. Tinto, Jet Propulsion Lab.
- LISAの3つのスペースクラフト間の6つの光路長測定結果の線形結合をとって、最適化、もしくはロバスト性向上を目指すという話。だからどうする、という話は無かったように思う。
- LISA phase measurement technique,
M. R. Marcin, Jet Propulsion Lab.
- LISAで用いる位相検出システムとそのテスト実験。干渉計ではなく、RF信号処理部のテスト。目標の10^-5
cycle/sqrt(Hz) には2桁届いていないが、実験結果が示されていた。
- LISA laser noise cancellation test using time-delayed
interferometry,
A. C. Kuhnert, Jet Propulsion Lab.
- 基線長の違う2つの干渉計出力信号に適当な演算をすることでレーザーの周波数雑音をキャンセルする実験。レーザー光源の光を2つに分け、それぞれAOMで周波数シフトしてから非対称マイケルソンに入射する絵を示していた。実験結果は示されていなかった。
- Bench-top interferometric test bed for LISA,
D. Shaddock, Jet Propulsion Lab.
- オーストラリアでRSE実験をしていたD.Shaddockの発表。春からJPLに移ってLISA関係の実験をしているそうだ。ULEの土台に鏡をオプティカルコンタクトした小型干渉計実験の結果を示していた。やはり、初期調整が難しいらしい。10^-9 m/sqrt(Hz) @ 10mHzの安定度。もっと安定でも良いような印象。温度制御無しで大気中での実験のためか。これから真空中で実験するそうだ。
- Beam pointing sensor for the LISA mission,
F. G. Dekens, Jet Propulsion Lab.
- He-Neレーザーの光を2つに分け、それぞれAOMで周波数シフトした後、干渉させ、分割型ディテクタで検出する実験。要はWFSに相当。4urad/sqrt(Hz)
@1mHzという結果を示していた。目標とか原因とかは示されていなかったので、だからどうなのか良く分からなかった。
- LISA and SMART2,
Jim Hough,
- プログラムには載っていなかったが、追加で講演。LISA, SMART2とそのためのR&Dのオーバービュー。いろいろやってますよ、という感じ。
SESSION 3 : Data and New Techniques
- Cassini gravitational wave experiment,
J. W. Armstrong, Jet Propulsion Lab.
- 人工衛星Cassiniを用いたdoppler trackingによる重力波探査。40日間の観測結果を示していた。非常に興味があったが、肝心な結論のところで睡魔に襲われて結果を聞き損ねた。
- Optical Displacement Sensor (ODS), a LISA's inertial reference
sensor candidate,
M. Chiao, Jet Propulsion Lab.
- Drag-free制御に、静電型ではなく光センサを用いたら、という提案。シンプルなシャドウセンサの図と実験結果を示していた。20nm/sqrt(Hz)
@1mHzという結果で、目標より20倍悪い。ADCのノイズで制限されていると言っていた。ダイナミックレンジとかプリホワイトニングに関する質問が出ていたが、理解していないようだった。
- Preliminary studies of spherical proof masses in LISA drag-free
satellites,
B. Lange, VirtualPBX.Com., Inc.
- キューブ型ではなく、球型のテストマスを用いては、という提案。一つのスペースクラフトに一つのレファレンスマスを搭載すれば良くなるのでDrag-free制御が簡素化される。その反面、実績が少なく、ややチャレンジングでもある、というトレードオフがある、というのが結論。
- Possible LISA sensitivity below 0.1 millihertz,
P. L. Bender, Univ. of Colorado/Boulder
- LISAの感度を低周波数側に伸ばすにはどうしたらよいかということと、それによって何がもたらされるか、という話。低周波数では温度変化に十分注意しなくてはならないということと、BH-BH連星を合体の30-100年前から観測できるということを述べていた。
第一日目、以上。