- 会議の概要
- 毎年,12月に開催される重力波データ解析関係のワークショップ.今回で8回目になる.期間は,12月17日-20日の3日半.(前回は京都,その前がイタリアのトレント,その前はアメリカのルイジアナだった.次回はフランスのアネシー.)
- 会議規模としては,登録人数が100名ほど.昨年よりやや減少したか.
- 会場は,アメリカのウィスコンシン州・ミルウォーキーのダウンタウンにあるPlankinton
Building 7階のUCCE Facilityというところ.UWM (University of Wisconsin-Milwaukee)
が運営する School of Continuing Education のための施設.会場では机ごとにHUBと電源コンセントが準備されており,無線LANも使用できる.ネットワーク環境に関しては,これまでに参加したどの会議よりも素晴らしかった.ただ,そのおけげで,ほとんどの人がセッション中にラップトップを広げて内職やら何やらしていた.
- 今回の会議では,重力波源や共振型アンテナの講演が激減していた.その代わりに各干渉計からのデータを用いての解析結果や解析手法の紹介の講演が増加していた.やはり実データが手元にあると活気付いてくるのだろう.
- TAMA関係では,神田氏の総括的な話,高橋氏のチャープ波解析,常定氏のBHリングダウン解析,安東のバースト波解析,辰巳氏のオンライン解析と,実データの解析結果が示されていて,上々だったと思う.,それに加えて,S.
MarkaのGRB解析やP. Suttonのバースト波解析といったTAMA-LIGOコインシデンス解析の話や,P.Astoneの講演内で触れられたROG-TAMA共同解析の話題もあり,国際共同解析に参加している,という印象も与えられただろうと思う.
- 講演数ではLIGOのものが多かったが,最終結果がほとんど示されていなかった.慎重になっているのは分かるが,やや物足りない印象を受けた.各解析グループでしっかりと解析を進めている一方で,複数人が独立に同様のことをやっているという印象もある.グループ内競争とも言えるし,トップダウンでかっちりオーガナイズされているわけではないとも言えるだろう.
- GEOのグループは,ほぼLIGOの解析グループと同化している.ただ,その中で重要な役割を果たしているので,それで良いのだろう.いよいよGEOの干渉計も本格的に動き出しデータが取られ始めているので,今後どうしていくのかは見所である.一方,VIRGOからはは参加者も講演数も少なく,寂しい印象.ただ,両腕ともインストールが完了したとのことなので,来年のフランスでの会議でどういう発表をするかは楽しみである.LISA関係では,TDI (Time Delay Interferometry)に関する話など.別の雑音の影響や重力波に対する応答など,周波数雑音を除去した後の話に焦点が移っていた印象.また,LISAの次のミッション(BBO, DECIGO)についての話は,どれも興味を持って聞けた.
- 重力波源に関しては,最近に発見された中性子星連星によって連星合体の予測イベントレートが増加する,という件を,それらの論文の共著者(Kimさん)が話していた.
- 交通,生活など
- ミルウォーキーのジェネラル・ミッシェル国際空港まで,日本からの直行便はない.また,クリスマスシーズンという事でアメリカ国内便の予約が一杯だったため,少し苦労した.行きは,Los
AngelsとMinneapolisで2回飛行機を乗り換えた.帰りはLos Angelsで1回の乗り換えだった.飛行機に乗っている時間は,片道15-17時間.乗り継ぎも含めると20時間ほどかかった.空港からホテルまでは乗合のバンで30分程度.
- 泊まったホテルは,ダウンタウンにあるHyatt Regency.やや年代を感じるところもあったが,立派なホテルだった.建物中央に地階から最上部までの吹き抜けがあった.廊下の手すりが低いので,酒を飲んで歩く時にはちょっと怖い.
- 気候は,とにかく寒い.ただ,乾燥しているためか,雪はほとんど積もっていない.12月には日中の最高気温でも氷点下で,川は凍っている.ただ,ダウンタウン中心部の幾つかの建物はSky
Walkと呼ばれる渡り廊下で結ばれており,外に出なくてもさほど不自由はしなそうだ.宿泊したホテルから会議の会場までもこのSky
Walkで結ばれていた.
- ミルウォーキーの名物は,ビール.Millerビールの大工場があり,見学できるそうだ.確かに美味しかった.
- その他
- 会議の期間中,LIGOとのバースト波共同解析に関するミーティング,ローマの共振型アンテナとのコインシデンス解析に関してP.
Astoneとの話合いもあった.
- DECIGOに関して,LISAのP. Benderと議論をする機会を持つことができた.直接干渉型DECIGOの話ををしたら,加速度雑音が問題だ,と翌日に資料を渡してくれた.多少は興味を持ってくれたかもしれない.
- 会議初日の夜にあったSocial Dinnerは,えらいさんの挨拶とかは全くなく,ただの夕食だった.
- 最終日,会議は午前中で終ったので,午後,少しだけ街の観光をした.あまり期待していなかったのだが,ミルウォーキー美術館やミルウォーキー公立博物館の展示はともに立派だった.また,夜には,NBAの試合観戦もでき,時間がなかった割には十分満足できた.ただ,郊外にあるというMillerビール工場見学に行く時間がなかったのは残念.冬は寒いが,アメリカにしては歴史を感じさせる街なので,夏場に訪れるのはいいところかもしれない.
会議の概要,以上.