重力波とは?


     重力波とは?
 重力波とは光速度で伝搬する「時空のさざなみ」で、アインシュタインが一般相対論からの帰結として1916年にその存在を予言しました。一般相対論によると、重力は時空のひずみとしてあらわれ、たとえば星のまわりでは時空がひずんでいます。もしこの星が連星を作っていて、2つの星の重心の周りを回転している場合には、時空のひずみも時間的に変化し、その影響は連星から四方八方に広がっていきます。これが重力波です。重力波は超新星爆発や中性子星からできた連星の合体などの非常に激しい現象にともなって放出されます。


    重力波で何がわかるの?
 重力波は強い重力場の中で作られるため、捕らえた重力波の性質を詳しく調べることによって、果たしてアインシュタインの一般相対論が正しい理論なのかどうかを検証することができます。また、重力波の一番の特徴である透過性の良さにより、光や電波では良く見えないブラックホールや中性子星の核心に迫ることができます。同様の理由によって重力波は、宇宙の誕生(ビッグバン)直後を見ることができる唯一の手段であると考えられています。


    重力波が何の役にたつの?
 重力波が直接に毎日の生活に役立つことはありません。しかし、重力波検出によって宇宙を見る新しい目をもち、これにより新しい宇宙像を獲得することは、人類の知の創造にほかなりません。このような営みも人類にとって大切なものであると私たちは考えます。


    重力波は見つかったの?
 残念ながら、いまだ重力波の直接検出には成功していません。しかし、間接的には重力波の存在は検証されていて、その存在を疑う余地はありません。これは、1974年にHulseとTaylorにより連星パルサーPSR1913の公転周期が減少していることが見出され、これが重力波放出にともなうエネルギー減少によるものであることが証明されたからです。彼らはこの発見により、 1990年のノーベル物理学賞を受賞しています。


    重力波はどうやって捕まえるの?
 重力波は、2点間の距離を変化させます。そこで2点間の距離の変化を計測することにより重力波を捕らえることができます。しかしその効果は極めて弱いもので、例えば現在ねらっている重力波の振幅(無次元のひずみ量をh であらわす)はh =10-21程度ですが、これは太陽と地球の間の距離をわずか水素原子1個分変化させるだけです。このように微弱な変化を検出するには、極限計測の技術を必要とします。



     日本のTAMAとは?
 TAMA300は、三鷹の国立天文台に設置された片腕300mのL字型をしたレーザー干渉計重力波検出器です。世界に先駆けて、1999年から重力波の観測が可能となりました。現在でも世界最高の検出感度と安定性を誇っています。観測と改良をくり返しながら、TAMA300は銀河近傍からの重力波の検出をめざしています。


TAMA300重力波検出器(三鷹)

 TAMAセンタールーム


 世界の現状は?
 アメリカでは基線長4kmの2台のレーザー干渉計LIGOの建設が終了し、現在本格的観測に向けて準備しているところです。ヨーロッパではイタリア・フランス連合のVIRGO計画(基線長3km)、およびドイツ・イギリス連合のGEO計画(基線長600m)が進行中です。その他、オーストラリアでも同様の計画(AIGO)をもっています。

 日本の将来計画は?

 日本の次の計画はLCGTとよばれ、低温技術を利用した3kmのレーザー干渉計が検討されています。このような次世代レーザー干渉計を実現するためのさまざまな技術開発を、私たちの研究室でも推進しています。また、21世紀の重力波天文学の最終的な舞台は宇宙空間になるでしょう。このようなスペースを利用した巨大レーザー干渉計についても、その実現性や技術的問題の検討を始めています。